売れる営業は○○を言わない|“逆説”で学ぶ営業の本質
はじめに

営業トークを磨いているのに、なぜか成果が出ない。頑張っているはずなのに、お客様との会話がうまく噛み合わない…。
こうした悩みは、特に営業未経験から事業を始めた個人事業主や、現場で営業に挑戦している小規模事業者にとって、非常に共感できるものではないでしょうか。
多くのビジネス書が「売れる言葉」「響くセールストーク」を指南する一方で、本書『トップセールスが絶対言わない営業の言葉』は、まさに逆の視点——「言ってはいけない言葉」にフォーカスを当てています。
言葉ひとつで、相手に与える印象は180度変わります。
売れる営業が「何を言っているか」よりも、「何を言わないか」に気を配っていることを、本書は具体例をもって徹底的に教えてくれます。
「押しの強さ=営業力」という昭和型の営業観に違和感を覚えていた方にとって、本書はまさに“救い”になる一冊。
営業に苦手意識がある人こそ読むべき、実践的で納得感のある内容です。
本の概要
本書の著者・渡瀬謙氏は、大手人材会社リクルートでトップセールスを記録した人物。もともと“ロベタ”と自称するほどの無口で人見知りの性格でありながら、言葉の選び方ひとつで成績を劇的に変化させたという実体験をもとに、本書を執筆しています。
タイトルのとおり、本書では「トップセールスは絶対に言わないNGワード」に焦点を当てており、全6章・合計31個の“禁句”を例示しながら、実務にどう活かせるかを解説しています。
たとえば、
- 「お世話になります」は初対面で使うとNG
- 「お忙しいところすみません」は逆効果
- 「ご説明させていただきます」は聞く気を失わせる など、業界で常識と思われていたセリフこそが、実は営業成績を下げる原因になっている——という鋭い切り口が特徴です。
同ジャンルの営業書と比較しても、本書の特徴は「売れるトークの型」ではなく、「売れないトークを消す方法」に徹している点にあります。そのため、セールス初心者でもすぐに実践可能で、特別なスキルが不要な「言い換え術」が満載です。
どんな人におすすめか
本書は、以下のような方に特におすすめです。
■ 起業直後で営業に苦手意識がある個人事業主
自分の商品・サービスに自信はあるが、「売り込み」がどうしても苦手。断られるのが怖くて、一歩が踏み出せない…。そんな人には、「営業しない営業」ができる本書のアプローチが刺さります。押し売り感を消し、自然に信頼を得る会話術は、まさに救いになるはずです。
■ 顧客との会話でよく「空回り」してしまう営業担当者
提案内容は悪くないはずなのに、なぜか心を開いてもらえない…。そんな壁を感じている人には、本書で紹介される「NGワード」がヒントになります。成果を出している人が“使っていない言葉”を知ることで、自身の会話に潜む“地雷”を特定できるでしょう。
■ 売上が安定しない副業・フリーランス
週末起業や副業型フリーランスなど、限られた時間で営業活動をする人にとって、「失敗しない会話設計」は死活問題。本書の“言わない技術”は、時間の無駄打ちを減らし、的確に見込み客を育てていくための武器になります。
■ スタッフに営業教育をする立場の経営者
社員やアルバイトスタッフに営業を任せている小規模事業者にとっても、本書は有効です。型にはめたマニュアルトークよりも、「言ってはいけないことを言わせない教育」のほうが、即効性があることに気づくはずです。
本書の構成と内容
本書は、6つの章で構成されており、それぞれ営業プロセスに沿って「絶対に言ってはいけない言葉」と、その言い換え例を紹介しています。以下に章構成の概要を紹介します。
章 | テーマ | 主なポイント |
---|---|---|
第1章 | 意外に重要な「挨拶」の言葉 | 「お世話になります」「お忙しいところすみません」は警戒心を生むNGワード |
第2章 | 会話が弾む「導入」トーク | 「さっそくですが」「天気の話」は逆効果 |
第3章 | ヒアリングの落とし穴 | 「ニーズはありますか?」「ご購入予定は?」は信頼を損ねる |
第4章 | 説明が伝わらない原因 | 「ご説明させていただきます」「買ってください」は通じない |
第5章 | クロージングの禁句集 | 「どちらにしますか?」「値引きしますので…」は逆効果 |
第6章 | 営業全体で使わない表現 | 「今月お願いできますか?」「たぶん…と思います」など、全体に共通する“避けるべき口ぐせ”に言及 |
それぞれの章では「NGワード→改善例→理由」の順で解説されており、読みながら自分の会話にすぐ当てはめられる構成となっています。
この本から得られる学び
本書から得られる最大の学びは、「営業は話す技術ではなく、言葉を選ぶ技術である」という逆転の発想です。以下、特に印象的だった学びを5つに分けて紹介します。
■1. 「売り込み感」を消すだけで反応が変わる
トップセールスは“営業トーク”をしているように見えない——これは、彼らが「売り込みを感じさせない言葉選び」を徹底しているからです。
例:「お世話になります」→「ちょっとお伺いしますが」に変えるだけで、相手の警戒心がガクンと下がる。
とくにテレアポや飛び込み営業では、“営業っぽさ”を排除するだけでアポ率が劇的に改善する可能性があります。
■2. 「言い訳・お願い・曖昧表現」は信頼を失う
・「忙しくて…」
・「お願いできますか?」
・「たぶん…だと思います」
これらの言葉は、「この人に任せて大丈夫かな?」と相手の中に不安を生みます。
本書では、これらを「営業としての自己肯定感の低さが滲み出る表現」と定義し、NGとしています。
小さな一言が信頼残高を減らしているかもしれない——そう思えるほど、刺さる事例が満載です。
■3. ヒアリングでは“質問しない勇気”が必要な場面もある
「ニーズはありますか?」
「今後ご購入予定はありますか?」
一見正しそうな質問ですが、相手に「売り込み」だと警戒させてしまう表現でもあります。
代わりに、相手の本音を引き出すには「観察」や「リアクション」「共感の返し」など、“質問以外の手段”を使うことが効果的。
実際の会話フローを見せながら、この「引き出す技術」についても丁寧に解説されており、応用しやすいのも魅力です。
■4. 「説明=説得」ではない
「ご説明させていただきます」
「この商品は○○のメリットがあります」
営業マンが一生懸命説明すればするほど、お客様は“聞かされている”という印象を持ち、心を閉ざします。
トップセールスは説明を“会話”に変え、説明の「主語」を自分ではなく相手に置きます。
これは、セールスレターやマーケティングコピーにも通じる本質的なポイントです。
■5. “クローズ”よりも“余白”が大事
「ご検討ください」も、「お願いできますか?」も、「どちらにしますか?」も——一見丁寧ですが、相手の心の動きに寄り添っていません。
トップセールスは、選ばせるのではなく、「話を続けてもらう」「考えてもらう」場を設計します。
余白を残すことで、結果として購買率が上がる。追い込むクロージングよりも、“待てる”スキルが信頼につながるのです。
印象的だった一節とその解釈
「私は営業マンです。これからあなたに売り込みをかけますので警戒してくださいね!」
——これが『お世話になります』に込められた、もうひとつの意味
初対面で何気なく発する「お世話になります」。
多くの営業マンが「丁寧な挨拶」として使っているこの言葉が、実は“売り込み警報”として相手に伝わっている——という指摘は衝撃的です。
著者はこの言葉を、「相手に営業だとバラしてしまう最悪の口グセ」としてNG扱いし、言い換えとして「ちょっとお伺いしますが…」を提案しています。
このように、「常識」と思われていた表現が実は逆効果だったと気づかされる一節が多く、自分の営業言動を一度ゼロベースで見直したくなる内容です。
特にオンライン営業やメール営業が主流になった今、「入り口の言葉」の重要性はさらに高まっています。
読了後のアクションプラン
本書を読んだあとの読者がすぐにできる実践アクションを5つにまとめました。
✅ 1. 自分の営業トークを録音し、NGワードをチェックする
聞いてみると意外と「すみません」「たぶん」が口癖になっているかもしれません。
✅ 2. 初対面の挨拶を「調査員マインド」に切り替える
「お世話になります」→「ちょっとお伺いしますが…」へ。
✅ 3. セールストークに“質問しない時間”を設ける
無理にニーズを聞き出さず、相手の話を引き出すスタンスに切り替える。
✅ 4. 商品説明のテンプレートを「相手視点」で書き直す
「メリット」ではなく「変化」にフォーカス。主語を「あなた」に置き換えてみましょう。
✅ 5. クローズトークを“選択”ではなく“余白”で設計する
「どちらにしますか?」ではなく、「どう思われましたか?」という余白のある問いへ。
まとめ
営業とは「伝え方」より「避け方」が重要である。
これが本書を通して得られる、最大の気づきです。
トーク力を磨くよりも、「言ってはいけない言葉」をやめるほうが、営業は圧倒的にラクになります。
無理な説得やプレッシャー型のクロージングではなく、信頼される話し方——それを可能にする“逆説的な営業術”が、本書には詰まっています。
もしあなたが、営業に対して「苦手」「自信がない」と思っているなら、なおさら読む価値があります。言葉を変えるだけで、自分自身の営業スタイルが変わり、相手の反応も変わる——そんな体験が、すぐそこにある一冊です。
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投稿者プロフィール

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えだもん
中小企業診断士・ファイナンシャルプランナーとして、補助金・助成金を活用した経営支援や、事業の資金繰り改善、利益最大化の戦略立案を得意とする。独立系FPとして10年以上の実績を持ち、経営者の右腕として全国の中小企業を支援している。利益改善に役立つLINEマガジンも連載中です。
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