部下が自ら動く組織に変える、リーダーの“引き算”思考

『最高のリーダーほど教えない』|“教える”を手放せば、部下は育つ

はじめに

「なぜあの子は自分で考えて動かないのか…」

「どれだけ教えても、いっこうに育ってくれない…」

部下を持つリーダーなら、一度はこのような悩みに直面したことがあるのではないでしょうか。

丁寧に教え、励まし、任せる——それでも成果が出ない。そんなとき、つい「部下の資質の問題」として片付けてしまいがちです。

しかし本書『最高のリーダーほど教えない』は、そうした“教える”マネジメントに一石を投じます。著者の鮎川詢裕子氏は、5000人を超える国内外のリーダー育成を手がける組織開発のプロ。

彼女が提唱するのは、「教える」から「気づかせる」への転換です。

本書は、部下に“自ら気づいて行動する力”を育てるマネジメントを、

  • なぜ必要なのか
  • どうすればできるのか を段階的に解説してくれる、まさに「指導の技術書」。

チームの成果に悩む小規模経営者、初めてマネジメントに挑む若手リーダーにとって、本書は“目からウロコ”の連続になるでしょう。


本の概要

『最高のリーダーほど教えない』は、「教えすぎが、部下の自立を妨げる」という視点からスタートします。

人は“教えられた答え”では動かない。

自分の内面で「本質に気づいたとき」にこそ、思考が深まり、行動が変わり、自律的に成長していく——

この人間の特性に基づいたマネジメントが、本書の中核です。

著者の鮎川氏は、日本・中国の両国においてリーダーシップ開発に取り組み、現場での対話・検証を重ねてきた経験から、「教えないほうが部下は伸びる」と断言します。

そのために必要なのが「気づきのマネジメント」。以下の3ステップが提唱されています。

  1. 対話の基盤をつくる(信頼関係)
  2. 気づきに導く“問い”を立てる
  3. 気づきを行動に変えるフィードバック設計

これらを繰り返すことで、部下は“教えなくても動ける人材”へと育っていきます。

組織における「人の育ち方」に悩むすべての人にとって、新しい答えが見つかる一冊です。


どんな人におすすめか

本書は特に以下のような立場・悩みを持つ方におすすめです。


■ 初めて部下を持ったが、思うように育たず戸惑っているマネージャー

「自分が頑張ればいい」とプレイヤー思考のままでいると、部下の成長は止まってしまいます。本書は“教えること”を手放すことで、部下が変わり始めるプロセスをわかりやすく示してくれます。


■ 組織の中で「自発性のないメンバー」に悩んでいる経営者

意見が出ない、反応がない、提案がない——その原因は“気づかせていない”ことかもしれません。本書を通じて、「行動を強制する」のではなく「行動したくなる気づきをつくる」方法が学べます。


■ 感情的な叱責や指示に頼ってしまい、マネジメントがつらい方

本書は“感情で動かさない”ことも強調します。「怒る」「押す」ではなく、「問いかけて考えさせる」関わり方へシフトすることで、リーダー自身のストレスも軽減されます。


■ 新入社員・若手が育たず、「最近の若者は…」と感じてしまう人

「教えても響かない」「やる気が見えない」という印象の裏には、信頼関係の未構築や、気づきの不足があるかもしれません。本書では、“行動を変えさせる”のではなく“視点を変えさせる”マネジメントが解説されています。


本書の構成と内容

本書は、以下の5章構成で進みます。

タイトル主な内容
第1章最高のリーダーは「教えない」で「気づかせる」成長を妨げる3つのリーダー行動と、気づきの基本
第2章部下を気づきに導く「かかわり方」信頼関係のつくり方と、“教えない”姿勢
第3章聴き取る力と質問力対話によって気づきを促す具体的技術
第4章気づきを行動に変えるフィードバックサイクル成長に繋がる振り返りと行動計画の立て方
第5章存在力のあるリーダーになる自らの在り方を見直し、信頼されるリーダー像を築く方法

各章には、実際のリーダーの声やエピソードも豊富に掲載されており、理論と実務がバランスよく織り交ぜられています。



この本から得られる学び

■1. “教える”ことが、成長の妨げになることもある

つい善意で教えてしまうことが、実は部下の「考える力」や「主体性」を奪っているかもしれません。本書では、リーダーが“教えすぎ”をやめることで、部下が本来持っている可能性を引き出すことができると語られています。

■2. “問い”が行動を変える起点になる

「どうすればいいと思う?」と問いかけられた瞬間、部下は“自分の中にある答え”を探し始めます。この内省のプロセスが、教えるよりもはるかに深い学びをもたらす——本書が一貫して伝える重要な視点です。

■3. フィードバックは“評価”ではなく“気づき”のためにある

成果や態度を指摘するのではなく、「なぜそうなったか?」「どんな意図だったか?」を一緒に考えるフィードバックが、人の成長を促します。本書では「振り返り」をチーム文化にする方法も紹介されています。

■4. 信頼は“共感”より“役割理解”から生まれる

部下と信頼関係を築くには、仲良くなる必要はありません。むしろ、「自分が部下にどう見られているか」を意識し、リーダーとしての“軸”をぶらさないことが、信頼を得る第一歩であると説かれています。

■5. 「気づきのマネジメント」は、リーダー自身の成長も促す

教えるのをやめ、“聴く”“問いかける”スタイルへ転換することは、リーダー自身の感情コントロールや視座の向上にもつながります。つまりこのスタイルは、部下だけでなく、リーダーも育てるマネジメントなのです。


印象的だった一節とその解釈

「人は、自ら気づいたときにしか、本当には変われない。」

この言葉は、本書の核心を突いています。

部下を変えようと「指導」「指摘」「説得」を繰り返すのは、時に逆効果。

大切なのは、“本人が自分で気づく”ことを支援すること。リーダーはあくまでその「気づきの触媒」であるべきだと、この一節は教えてくれます。

これは、単なる人材育成論にとどまらず、組織の風土そのものを変えていく力を持つ視点です。


読了後のアクションプラン

  • 日報やミーティングで、部下に「自分で気づいたこと」を話してもらう時間を設ける
  • 指示の前に、「どうしたい?」「なぜそう思う?」と問いを投げかける
  • フィードバックでは、改善点よりも“気づいた点”を部下自身に語らせる
  • 感情的な反応を抑え、「事実」と「解釈」を分けて会話するよう意識する
  • 自分が「教えすぎていないか」を1日の終わりに振り返る習慣をつける

まとめ

『最高のリーダーほど教えない』は、“部下を動かす”のではなく、“部下が動きたくなる土壌をつくる”マネジメントに気づかせてくれる一冊です。

  • 教えない勇気
  • 待つ余裕
  • 聴く姿勢
  • 問いの力

これらを武器に、リーダーは「育てる側」から「気づかせる伴走者」へと進化する。

その結果、チーム全体が自律的に動き出す——本書はそんな未来を示してくれます。

「もう教えるのをやめよう。」

そう思えたとき、あなたのリーダーシップは次のステージに進んでいるはずです。

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投稿者プロフィール

枝元 宏隆(中小企業診断士)
枝元 宏隆(中小企業診断士)
えだもん
中小企業診断士・ファイナンシャルプランナーとして、補助金・助成金を活用した経営支援や、事業の資金繰り改善、利益最大化の戦略立案を得意とする。独立系FPとして10年以上の実績を持ち、経営者の右腕として全国の中小企業を支援している。利益改善に役立つLINEマガジンも連載中です。