営業が変わる、組織が強くなる|非対面で成果を出す方法
『インサイドセールス』|“会わずに売る力”で営業組織はここまで変わる
はじめに

「営業は足で稼ぐもの」——そんな常識に違和感を持ったことはありませんか?
とくに、オンライン商談が急増し、テレワークが当たり前になった現代では、従来の“訪問ありき”の営業スタイルは、効率面でも心理的ハードルの面でも限界を迎えつつあります。
本書『インサイドセールス』は、まさにその変化に対応した新しい営業手法——「訪問せずに売る」ための組織づくりと実践ノウハウを徹底的に解説した一冊です。
著者は、ビズリーチでインサイドセールス部門の責任者を務めた茂野明彦氏。自らの実践と試行錯誤をもとに、日本企業の営業組織を「効率型」「戦略型」へと変革するヒントを提示しています。
本書は単なる業務改善マニュアルではなく、これからの営業に求められる「信頼の設計」「役割の再定義」「マネジメントの本質」を、現場目線で掘り下げた実務者必読のガイド。
とくに、営業組織を1人で運営しているフリーランスや、小規模事業の経営者にとっては、「訪問しないで売る」ための“仕組みづくり”の道標になるはずです。
本の概要
著者の茂野明彦氏は、Salesforce.comやビズリーチなどで営業部門の改革を牽引してきた実務家であり、本書は彼の10年を超える実践知を集約した実務ガイドです。
タイトルにもある「インサイドセールス」とは、顧客訪問を行わず、主に電話・メール・オンライン会議などを通じて商談を進め、成約を目指す営業手法です。しかし本書の強みは、その“やり方”だけでなく、“なぜインサイドセールスが今必要なのか”という根本の問いにまで踏み込んでいる点にあります。
社会の変化、購買行動の変化、そして営業現場の課題を踏まえた上で、下記のようなテーマに体系的に触れています:
- インサイドセールスの3つの役割と組織設計
- SDR/BDR/オンラインセールスの違いと連携
- ビジネスモデルごとの最適な配置パターン
- 採用・教育・評価指標(KPI)など実務面の具体策
- テクノロジー活用と仕組み化
さらに、ビズリーチやAmazonなど先進企業の導入事例も豊富に盛り込まれており、「理論→実践→成果」という流れがイメージしやすくなっています。
どんな人におすすめか
本書は、以下のようなビジネスパーソンに特におすすめです。
■ 営業体制を見直したい中小企業の経営者・営業責任者
「人手が足りない」「移動時間がムダ」「商談が属人化している」といった課題を抱える中小企業にとって、本書は営業組織の再設計を考える最適な羅針盤となります。属人的な営業から脱却し、仕組みで売る体制を整えたい方に必読です。
■ BtoBビジネスを行うフリーランス・一人社長
オンライン商談でのアプローチや、見込み顧客との接点設計に悩んでいる方にとって、本書は“訪問不要”でも信頼関係を築ける手法の宝庫です。再現性の高いナーチャリングのプロセスを知りたい人におすすめ。
■ 営業未経験からチームをマネジメントする新任マネージャー
営業経験はあっても「人を育てる」「KPIを作る」「分業体制をつくる」といったマネジメント経験が乏しい人にとって、本書は“型”と“考え方”の両方が学べる実務指南書です。
■ 人材・IT・SaaS業界でインサイドセールス導入を検討中の方
SaaSモデルや月額課金ビジネスなど、顧客との長期的関係構築が重要なビジネスモデルでは、インサイドセールスは必須の戦略です。立ち上げフェーズにいる担当者にとって、業界事例が豊富な本書は即効性の高い教材です。
本書の構成と内容
本書は全8章+事例・付録で構成されており、インサイドセールスの概念から実践、運用、組織強化までを網羅しています。以下に、各章のポイントをまとめます。
章 | タイトル | 主な内容 |
---|---|---|
第1章 | インサイドセールスとは | 概念の整理、SDR/BDR/オンラインセールスの役割 |
第2章 | インサイドセールスの配置 | 分業型/独立型/混合型の組織設計と適用パターン |
第3章 | ビジョンと組織の立ち上げ | 立ち上げ時の落とし穴と成功のポイント |
第4章 | 採用と育成 | 適性判断、チーム構成、面接設計 |
第5章 | 成果指標とKPI設計 | 初期・中期・後期のKPIモデルと評価方法 |
第6章 | 営業部門との連携 | マーケ部・営業部との連携と会議設計 |
第7章 | 組織マネジメント | 能力開発、マネジメント、権限移譲、可視化 |
第8章 | インサイドセールスの未来 | DX推進の起点、今後の営業組織の在り方 |
さらに章末ごとに、Amazon、NEC、Salesforceなど他社の導入事例インタビューが挿入されており、抽象的になりがちな概念が具体化されています。
この本から得られる学び
本書は単なる「電話営業の手法」ではありません。営業組織全体を“構造”として捉え直し、「訪問なしでも売上を伸ばせる」仕組み化・効率化の思想を教えてくれます。特に印象的な学びを5つ紹介します。
■1. 「訪問なし」の営業はもはや選択肢ではなく、戦略である
新型コロナを契機に、対面に頼らず成果を出すことが求められる時代になりました。本書は「訪問しなくても売れる」ではなく、「訪問しないからこそ売れる」営業スタイルを提唱します。非対面でも信頼関係を築ける設計、テクノロジーの活用方法、組織の分業設計など、営業戦略のアップデートが必要であることを痛感します。
■2. SDR・BDR・オンラインセールスの役割分担が成果を左右する
売上を最大化するには、“誰がどのタイミングでどの役割を担うか”を設計することが重要です。
- SDR(Sales Development Representative)はインバウンド対応
- BDR(Business Development Representative)はターゲット企業へのアウトバウンド
- オンラインセールスは商談・クロージング担当
という分業によって、営業の属人性を排除し、誰でも一定の成果を出せる体制をつくることができます。
■3. 商談のKPI設計は“導線”と“粒度”がカギ
成果が出ない営業組織は、KPIが間違っていることが多い。本書では、成約数だけでなく、「商談数」「接触数」「失注率」「案件滞留率」など、導線全体を数値化し、施策のどこがボトルネックなのかを特定できる設計を解説しています。中小企業やフリーランスにも応用できる、シンプルかつ実践的な指標設計が学べます。
■4. 採用と教育は「スキル」より「志向」で判断する
営業職はスキルよりも「行動し続ける力」が大切。本書では、インサイドセールスに向いている人材の特徴や、面接の評価基準、育成プログラムの設計法まで解説されています。とくに印象的なのは、スキルよりも「問いを立てられるかどうか」「失敗から学べるかどうか」で判断するという視点。これはマネジメントに携わる全ての人に有益です。
■5. 成功するチームには“共通言語”がある
「トークスクリプトの共有」や「商談の成功パターン共有」は、個の力をチームの力に変える最も効率的な方法です。本書では、「知の属人化を防ぐナレッジマネジメント」や「メンバーが自ら改善する文化の作り方」にも触れられており、小さな会社でも導入できる「仕組み化の哲学」が学べます。
印象的だった一節とその解釈
「インサイドセールスの本質は、営業手法ではなく、買い手の体験を再設計することにある。」
本書の冒頭で述べられるこの一文は、営業という仕事の見方を大きく変えてくれます。
従来の営業は、どう“売るか”に注目が集まりがちでした。しかしインサイドセールスは、「相手が“買いたくなる”環境を、非対面でもどう設計するか」が核にあります。つまり、売り手主体の「押し売り」ではなく、買い手主体の「導かれるプロセス」を整えることこそが営業の本質なのだというメッセージです。
これは、営業だけでなくマーケティング、商品開発、カスタマーサクセスにも通じる普遍的な視点であり、ビジネス全体の再設計にもつながるパワフルな一節です。
読了後のアクションプラン
本書を読んで「なるほど」で終わらせないために、以下のアクションに今すぐ取り組みましょう。
✅ 1. 自社の営業プロセスを図解して“属人化ポイント”を可視化する
→ どこで「その人じゃないとできない」状況が起きているかを明確に
✅ 2. SDR・BDR・オンラインセールスの役割を紙に書き出す
→ 担当者がいなくても「仮設配置」で分業プロセスを整理するだけでも効果あり
✅ 3. 初回商談に至るまでのプロセスと数字を洗い出す
→ 問い合わせから何件が商談化されているか?商談化率が低いなら何が原因か?
✅ 4. トーク内容を録音・文字起こしし、成功パターンと失敗パターンを比較する
→ 同じセリフでも成否が分かれる理由を「空気感」ではなく言語化する
✅ 5. 営業マネジメントに“ティーチング”ではなく“ファシリテーション”を取り入れる
→ 教えるのではなく、引き出すスタイルへ。共通言語づくりが鍵
まとめ
『インサイドセールス』は、営業という仕事を根底から見直すための一冊です。訪問せずに売る——それは“ラクする”ための手段ではなく、今の時代に即した“買い手本位”の戦略です。
本書を読むことで、
- 「営業=対面」が常識だった思い込みが外れる
- 組織の再設計に必要な視座が得られる
- チームで売る、仕組みで売る発想が育つ
といった多くの変化を体感できるはずです。
個人でも、小さな会社でも、営業の未来は変えられる。
その第一歩を、この一冊から踏み出してみてはいかがでしょうか。
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投稿者プロフィール

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えだもん
中小企業診断士・ファイナンシャルプランナーとして、補助金・助成金を活用した経営支援や、事業の資金繰り改善、利益最大化の戦略立案を得意とする。独立系FPとして10年以上の実績を持ち、経営者の右腕として全国の中小企業を支援している。利益改善に役立つLINEマガジンも連載中です。
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